バンライフの本場、アメリカ・カリフォルニア州からの現地レポート。フォルクスワーゲン・タイプⅡ・バス。バンライフを中心につながるディープなコミュニティを取材。

「VWタイプⅡバスが好き」 このキーワードですべてが通じ合う

オーシャンサイドにあるアールの家に集まってくる仲間たち。

I-5フリーウェイに乗り、南に向けてドライブしていると、サンクレメンテのあたりから道路が海沿いに走るようになり、広い青空の下、まさにこれぞカリフォルニアといった景色を楽しめる。

古いキャンパーにサーフボードをくくりつけてビーチでおしゃべりするサーフ仲間、大きな犬を連れてキャンプをする家族連れ、カスタマイズした自転車で海辺を走る若者たち。誰も気取らず、のんびりとにこやかで、毎日続く晴天を心の底から楽しんでいる。

そんな風景を横目に南下していくと、メロウな空気が流れる町、オーシャンサイドが現れる。

その住宅街の一角に、一段と人目をひく家があり。近所でも有名だというアールの家の前には次々と年代もののVWバスが到着しているところだ。

アウトドアライフがトレンドというよりは文化である南カリフォルニアに住む彼らにとって、こうした毎日は日常の1シーンであり、生活する上で不可欠な時間なのだそうだ。

もうすでにパーティが始まっているのか、バックヤードから笑い声や音楽が聞こえる。

アールはVWファンが集まるグループの中心人物で、「Cunado Wear」(クナード ウエア)というアパレルブランドのオーナーでもある。

「CUNADO」のロゴが入れられたTシャツなどのアパレルを販売。クナードとは、スパニッシュのスラングで、“Brother in Law”異母兄弟という意味の言葉だ。まさに彼らの関係を表している。

毎週末、こうして友人たちを招いてBBQパーティーを開いたり、山やビーチでキャンプをしたり、クルマのショーに出かけたりと、仲間たちとの絆を深めることに精を出している。

“空冷VW”好きという、たったひとつの共通点だけで何年もの友情が続いている、アールとその仲間たち。ほぼ毎週末、この場所に集まってそれぞれが心地よい時間を過ごしているのだそうだ。

何もすることがないときはどうするのかと尋ねると、愛車の整備や改造で何時間もガレージにこもっているよ、と笑って答えた。

この日、集まった仲間はすでに顔なじみ。アールのガレージにある工具を使って自分のクルマをいじったり、少し飲みすぎちゃった人は芝生の上で昼寝をしたりと、とてもリラックスした時間を過ごしている。

「何もすることがないなんてことは、南カリフォルニアではまずないよ。ずっとビーチにいて、友人とクルマの話をして、サンセットを眺めてから帰るのだって最高の一日だ」。大好きなVWと暮らす彼らの毎日は、文字どおり充実した日々のようだ。

夜が近づくと、アールのガールフレンドが外のテーブルに手料理を次々と並べる。ハウスパーティには慣れているのか、20人分もの料理を手際よく作り、そして彼女も一緒にその時間を笑顔で楽しむ。

日が暮れた後もパーティーは続く。BBQを囲んでクルマの話やビンテージカーのイベントの話に花が咲く。VWバスという共通の強い趣味でつながっている彼らは、文字どおり兄弟のようだ。

自分らしいスタイルで、それぞれのタイプⅡバスを楽しむ

アールのトランスポーターとガレージ

このコミュニティの中心人物、アールのトランスポーター。収まりの良い高さまでローダウンされ、ヤレたムードを醸し出しているボディとは対照的に、ポリッシュされたポルシェ・アロイ・ホイールがキマっている。

フロントウインドーは、左右独立したポップアップタイプ。

インテリアは、メキシカンラグを使ってシンプルにまとめている。

アールのガレージは、一見ガラクタばかりだけど彼らやVWバス好きにとってはお宝の山。

簡単なメンテナンスから、エンジンのフルオーバーホールまでできてしまうアールのガレージ。個人宅のガレージでエンジンの積み替え作業をするのは、アメリカではそれほど珍しいことではないのだ。

リフトアップされているバスは、少しだけインテリアのリフレッシュ中だとか。

ポップアップルーフを装備したタイプⅡ

Westfarlia純正のポップアップルーフをもつ、高年式のタイプⅡ。ルーフを開けると、リトラクタブル式のベッドが備えられていることがわかる。

内装キャビネットも、コンディションの良いオリジナルの状態が保たれている。

低年式のタイプⅡバスはインテリアに注目

こちらのタイプⅡバスは、低年式モデルにインテリアキットを独自で架装したもの。

室内に通常の家庭用チェアを使っているところが、アメリカ人らしい自由な発想だ。

観音開きドアで味のある一台

ボディ両側に観音開きの広い開口部をもつ。ボディ剛性にやや不安はあるものの、このドアがあるとさまざまな使い方に対応できる。

コンディション良好なトランスポーター

彼らのグループのなかでは、キチンとリペイントされ、そこそこの外観を保っている数少ないコンディションのクルマ。ボディタイプは希少なトランスポーターで、ルーフラックも合わせるとかなりの積載量を誇る。

近場のパークにVWを移動させ、記念撮影をパチリ。空冷フォルクスワーゲンという共通のクルマだが、それぞれのオーナーにとって自分のクルマへの思い入れはそれぞれ。カルマンギアとタイプⅢも参加してくれた。

※当記事はカーネル2022年3月号vol.53「USA VANLIFE Report VWバスとアウトドアライフがつくり出すコミュニティー」より抜粋しました

出典:カーネル2022年3月号vol.53