【記事概要】軽キャンピングカー・インディのオーナー「旅人ちはる」さんの紹介。車中泊旅を楽しむようになった経緯や車内装備など。

あれこれ準備するわけではなく、必要最低限のアイテムで旅を楽しむ。今回紹介する「車中泊の達人」は、そんな女性と軽キャンパーの旅の物語。

きっとそれは、所有する「モノ」だけの話ではなく、「心のムダ」も持ち歩かない、本当のミニマリストの姿なのかもしれない。

「旅人ちはる」さん プロフィール

ビールと温泉が大好きな「旅人ちはる」さんは、軽キャンピングカー・インディのオーナー。同名のYouTubeチャンネルでは、苦労しながらも、自由に移住生活を楽しむ飾らない姿に、同世代の女性たちから多くの支持が集まっている。

軽キャンピングカーで楽しむミニマムなクルマ旅

ゆったりとくつろぐちはるさん。これからも数多くの旅先で、こんな貴重な時間を楽しむのだろう。

彼女と初めて出会ったのは北海道の初夏。これまでも日本全国を旅しながら、個性的なオーナーの“カラー”を、ひしひしと感じてきた。そんなクルマに出会ってきた経験上、今回ちはるさんとインディは、一見「きれいすぎる」と感じるものだった。

せっかく買った人気の軽キャンピングカー。できるだけ、きれいにそのまま所有したい人もいるだろう。そんな先読みも頭をよぎったが、それはまちがいだったと、話を聞いてすぐに思い知らされた。

「クルマは一台なんです。通勤にも使っています」

毎日の足だからもちろん雪の中も走る。街路樹が白いのは、細かくて軽い雪が降る極寒である証。これが北海道の冬の日常的景色。そのなかをちはるさんは走行する。

広い土地にぽつりとある賃貸の一軒家と軽キャンカー。それが北海道夕張郡栗山町に、ひとりで移住した彼女の生活だった。

クルマの下側に視線を落とすと、ドアポケットに差し込まれたガイドブックは、何度もめくられた跡で、歪んで印刷がかすれていた。

「もう、旅するのがすごく楽しくて!」

そう語るちはるさんは、21歳のときに、アメリカ・シアトルに住む友人を訪ねたことをきっかけに、旅にはまったそうだ。バイクでタンデムしてもらい、大陸を自由に走り抜けたことが忘れられないという。

帰国後、バイクの免許を取ろうとしたが、のちに夫となる交際相手が猛反対。しばらく旅とは無縁の生活に。その後、子どもたちが自立したのち、彼女は、「ひとり旅」に飛び出すことになる。

YouTube撮影用にともらったスマホスタンド。機材はこれだけ。

新しい生活を求め、念願のバイクの免許も取得。休日には温泉やキャンプに旅立つ日々。しかし、少しして、バイクを手放すことになる。通勤にも旅にも対応できる軽キャンパー・インディを手に入れたからだ。ついに、ちはるさんのオンリーワンなスタイルがスタートする。

最低限の使い捨てのスキンケア用品と水着。これが彼女の常備品! 旅の途中で、偶然にも露天風呂を見つけたときに後悔したくないからだそう。

行動力があって、大胆な経歴のわりに、身のまわりはシンプル。それは「いま、やりたい」ことにすぐに挑戦するため。車内に普段、物を置かないように意識しているのも、いざ思い立ったときに、必要なものだけを積んで出かけたいからだという。

「やっぱり、日本一周もしたいですよね」

小さく笑ってみせるちはるさん。そして、次に住みたい場所も見つけたそうだ。明日、彼女がどこにいても驚いてはいけない。静かに情熱を秘めた旅人である彼女にとって、きっとそれは、自然なことだから。

車内はすっきりしていてシンプルを貫く!

展開したシートには季節に合ったベッドカバーを敷いて。自分にとって心地いい布団に包まれて眠る。

最後部の座席シート下に布団を収納。これ以外に後部は荷物が見当たらず、すっきりしている。掃除も行きとどいて、オーナーの性格が想像できる。

いくつかある収納棚も、ほとんど中はがらんとしている。唯一、物が詰まった棚の中身は意外にも「水着」

愛車・インディのカラーによく合う青いブーケは、女性の視聴者からのプレゼントだと語ってくれた。

冬の車中泊ができれば、ゲレンデ駐車場の朝も乗り越えられるはず。すてきな雪景色を独り占めすることができる。

宿泊したキャンプ場での朝の様子。夜中に降り積もった雪を、朝一番に取り除かなければ動けないのだ。女手ひとつで作業する。

出典:カーネルvol.51 2021年春秋号 
写真&文:うめの