【概要】バンライフ車をワークスペースに活用している澤野優美子さんを紹介。DIY素人ながらも日産バネットの内外装をバンライフ仕様にDIYし、快適でおしゃれなテレワーク空間を作り上げた。DIYのきっかけやこだわり、注目ポイントなどを紹介。

好きな場所でテレワークがしたい!

オーナー 澤野優美子さん

フリーで企業の広報コンサルタントなどを手がけている澤野さん。新しいワークスタイルを取り入れながら、地域や人とのつながりを大切にする活動なども活発に行っている。

ベース車両は日産バネット。コンパクトなワンボックスサイズで、十分な室内の広さがありながら、運転しやすいのがポイント。

車を改造したことでテレワークのスペースを得たが、それ以上に、移動できることの効果が大きかった。好きな場所に移動しながら仕事することで、気分転換にもなり、作業効率もアップしたという。

車をワークスペースにすれば、コスト面も気分的にもバランスがいい?

自分で飾りつけた空間で、自分だけの時間を過ごす。好きな場所に移動して、気持ちのいい景色を前に仕事する。

これはオーナー澤野優美子さんが抱いていた理想でもあった。キャンピングカーをレンタルして、使い勝手を確認したこともあるという。そして、海辺に車を止め、窓から入る風に夢を膨らませていた。

しかし、その自由なスタイル実現のためには、車を手に入れて、カスタムの方向性も決めなければならなかった。

いろいろな構想を練りながら、雑誌などを眺め、理想のリビングスペースを思い描く日が続いたという。

そして、事が大きく動いたのは、人々の生活に変化が現れた2020年。ご主人がリモートワークとなり、自宅で過ごす日が続き、新しいスペースが欲しくなってきたのだ。

自宅に部屋を増やすことも現実的ではなく、夫婦がお互い自由に利用できる車もあったほうがいい。

それならと、借りていたシェアオフィスを解約し、ワークスペースとして車を活用すれば、コスト面でも気分的にもバランスが取れるのでは、と気づいたのが転機だった。

そして、車探しがスタート。イメージとしては、海外のバンライファーがお手本。しかし、フリーランスとして企業プロモーションなどを行っている澤野さんにとって、車は仕事で使えることが前提。しかも運転のしやすさも求めたい。

車内にデスクワークで使える机を設置するのはもちろん、ときどき人を乗せるためのセカンドシートも確保しておきたいし、荷物もたくさん積み込みたい。

運転のしやすさ、荷物の積載量などを考えたとき、国産のバネット/ボンゴが候補にあがってきた。

DIY素人が予算10万円で、バンライフ仕様のDIYに挑戦

ベース車両は日産バネット。コンパクトなワンボックスサイズで、十分な室内の広さがありながら、運転しやすいのがポイント。

手に入れた車は、室内の広さを優先させて、ダブルタイヤの低床タイプのバネット。15年落ちで15万km走っていた。シートには破れがあって、プラスチックパーツは経年劣化が出ている。室内ファブリックもきれいとはいえず、タバコの臭いも漂っていた。

今回の車作りでの不安は、澤野さんがDIYの初心者だったこと。ノコギリを持ったこともなかったそうだ。

それでも挑戦したのは、キャンピングカー作りをサポートしてくれる「葉山RVサイト」と元大工の北澤さんがいたからだ。

HayamaRV-SITEキャンカーDIY倶楽部を利用すると、元大工でキャンピングカーに乗っていた北澤さんがアドバイスしてくれる。初心者でも安心できるサポート体制だ。

予算10万円と決めて、気軽にカスタムできるキャンピングカーを目指した。ワークスペースにするので、車内で寝ることは少ない。だからベッドを設置せず、家具も最小限に抑えた。

ただ「車内でおいしいコーヒーが淹れられたら」という希望だけがあったという。

予算に合わせるには木材選びも大切。葉山RVサイトはスターホームという住宅を総合サポートする会社が運営しているので、つながりのある近くの木材店で、長さ3.6mの、壁の下地に利用される貫板を入手。

天井裏には断熱効果の高いスタイロフォームとアルミシートが張ってあるので、日差しの強い日でも気温上昇を軽減してくれる構造になっている。

床にもスタイロフォームとコンパネをコーキング剤で接着して、その上にタイルカーペットを敷き詰め、下からの熱を遮断している。

家具はキャンプ用のチェアを置いて、折りたたみ式のテーブルを取り付けた。水回りにはイケアのおもちゃのシンクを改造して、水が使えるようにしている。

これで、しっかりとおいしいコーヒーも淹れられるだろう。そして最後に、空間を楽しんでいる澤野さんの姿が加わり、クルマは完成した。

注目ポイント① 超便利なイケアのアイテムを活用!

おしゃれな小物はイケアで購入したものが多い。壁に取り付けられているフック、ハンギングバスケットなどもすべてイケアのアイテム。

流しの付いたキッチン家具は、子ども用のおもちゃとしてイケアで売っているものだというから驚き。

HayamaRV-SITEがあるスターホームで、子ども用スペースに置いてあったものを処分するときに譲り受け、実際に水が使えるように改造してある。

シンク横のIHヒーター部分はフェイクだが、本物を入れたいという。

注目ポイント② 運転席もDIYで激変。オシャレな空間に!

天井から、ピラー、ダッシュボード、ドアパネルまで、すべてに化粧が施されて、かわいらしさと高級感を感じるテイストに。天井やダッシュボードの塗装には、革などを塗装できる染めQを使っている。

ピラーには、セカンドシートカバーの素材を、温めながら曲面に張り付けた。ステアリングは革のカバーを装着。ステッチは澤野さん自身が編み込んだ。

注目ポイント③ 快適でリラックスできる車内環境

家具がシンプルなので、室内は広々。本を読んだり、ドリンクを飲んだり、リラックスできる環境が整った。

天井にはLEDダウンライトをセット。6灯あるので、室内を照らすには十分な明るさだ。天井は杉の板が規則正しく並び、インテリアのテクスチャーも美しい。

天井のLEDライトの配線はスライドドア横の壁に下りてきて、電源と接続できるようになっている。

視線を遮るためにカーテンを設置。右サイドウインドウは、布にマグネットを付けて、窓部分にカーテンを装着できるようにしている。

その他はカーテンレールを設置。前側は形が自由に変えられるレールを天井の板にビス留め。

リア側は棒タイプのレールを左右で固定。接合部分がフレキシブルに動き、角度ある壁にも設置可能だ。 

電源にアンカーのPowerHouseII400を使っている。バッテリー容量は388.8Whあり、出力は300W。室内の照明、スマホ充電、パソコン充電などに利用するのであれば、連泊も十分にカバーできるサイズだ。

注目ポイント④ スケルトン仕様で変幻自在のレイアウト

家具を最小限に抑えたスケルトン仕様。シンク、棚、シートを下ろすと、車内は広々とした空間として利用できる。フロアは40×40㎝のタイルカーペットを20枚敷き詰めた。

フロア部分は簡単に外せるようになっていて、セカンドシートがセットできる。

カバーとクッションを使って、シートをデコレーション。普段、セカンドシートはシンクの奥前方に跳ね上げてあって、カバーをかぶせているだけ。

シンクや棚が可動式なので、レイアウトのアレンジもしやすい。このレイアウト展開は澤野さんの希望だった。

注目ポイント⑤ こだわりの仕上げでDIYがランクアップ

室内の木材塗装はBRIWAXのクリアを使用して、木本来の色味を活かしている。

外装にはタカラ塗料のビスケットをセレクト。ハケやローラーで簡単にクルマのオールペイントができるので、DIYユーザーには人気の塗料。

塗装前に窓枠のモールやプラスチックパーツをしっかりとマスキングするのが、きれいに仕上げるコツ。次回はバンパーを塗装する予定だ。

DIYする場所がなければ、作業スペースのレンタルがおすすめ

作業場所となったHayamaRV-SITEでは、バンライフしたい人のために新サービス「HayamaRV-SITEキャンカーDIY倶楽部」をスタートさせた。

澤野さんのように、自分の車をDIYしたい人に向けて、場所と道具を提供する会員制のサービス。料金などの詳細はYouTubeチャンネル「葉山ブッシュクラフト」の概要欄を参照。

元大工でキャンピングカーに乗っていた北澤さんがサポートしてくれる。

澤野さんはノコギリを使ったことがなく、木の切り方から教えてもらったという。ある程度の道具をそろえたが、インパクトドライバーなどはレンタルした。プロ仕様の扱いやすい道具を利用できるのもポイント。

出典:カーネルvol.49 2021年春号
写真:中里慎一郎
文:渡辺圭史