仕事専用車を癒やしの空間にDIY
パソコンのキーボードを叩くペースが遅くなると、車に乗って、近くの駐車場へ移動する。
もともと、じっとしていられなかったという渡辺圭史さんにとって、仕事が行き詰まったときの気分転換は、作業環境を変えることだ。その相棒となるのがこのハイゼットカーゴ。
車雑誌の編集者だったこともあり、仕事の移動は車がメイン。長距離移動も多いので、仕事用に泊まれる車中泊車両を作ることを決めたという。
せっかく作るのなら、たくさんの人が「自分もやってみたい」と思えるような、楽しい車両ができたら、と考えていた。
ツリーハウスのワークショップに参加するほど、タイニーハウスへの思いが強かった渡辺さん。イメージしたのは、木に囲まれた、古い船のキャビンのような狭い空間だった。参考になる資料が少なく、インターネットでいろいろなスタイルを探したという。
ベース車両はハイゼットカーゴハイルーフ。最初からひとり仕様を想定して、軽自動車を選んでいる。
木材を張るにしても、室内は極力狭くしたくなかったので、板張りの方法で頭を悩ませたそうだ。着替えしやすいように、室内の高さを確保することも大切だった。
構想期間は約3カ月。材料はすべて、ホームセンターと通販サイトのアマゾンで買えることを条件とした。
木材加工に1日をかけて、車への組み付けは2日。計3日で基本的構造物が完成したという。ポータブルバッテリーを電源にしているので、難しい電気などの配線はしていない。
室内の家具といったら、自作のテーブル程度。床の板はフロアに置いてあるだけで、板を固定するために、メタルプレートで木材を連結した。
テーブルの脚、フロアのプレートに黒い鉄を使用したことで、ウッディな室内にアクセントが加えられた。
修正したいところは多い、というが、この車を手に入れてからは、自由に好きな場所で作業できるようになったとも。ストレスフリーな車中泊ライフを楽しんでいる様子だ。
車中泊もできる仕事部屋、さらなるこだわりポイントをCheck!
シンプルイズベストなリモートワーク空間
自作のテーブルの下にあるのはワイン用の箱。自宅の荷物整理用に購入していたものを2個を並べて、鉄のクランプで2カ所固定し、横長に置いている。洗面用具、食器、ガスコンロ、ランタンなど、すべてがこの中に。
テーブルや収納ボックスは置いているだけなので、ボディのサービスホールにアンカーを取り付け、カラビナやロープで固定している。
ベッドルームはひとり仕様
室内への乗り込みはフロントシートからが基本スタイル。靴を脱ぐ場所などを考えると、フロントからの乗り込みがちょうどいいという。
ひとりでしか使わないと割り切っているので、助手席は常に倒して、通りやすくしている。
車中泊を激変させたふたつのアイテム
車中泊をするうえで、一番効果を実感したのはカーテンと網戸だとい う。カーテンはニトリのセミオーダーカーテンで、設定されたサイズだ が、細かく長さを選べるタイプ。
網戸はアイズの既製品を装着してい る。室内で寝たとき、街灯の光が直接顔に当たることが多いので、カ ーテンの効果は大きかったという。
アウトドアギアを活用
車内の装備はキャンプ用品が多い。ベッドはなく、サーマレストのマットレスを使用。シュラフはハイランダーの封筒型ダウンシュラフ。ライトはルーメナーだ。
クーラーボックスはイエティのローディー20。宿泊する日数に合わせて、保冷剤の量を調整する。
電源はSUAOKIのポータブルバッテリーを使用。電気容量は222Whタイプ。あまり電気を使うシーンがないので、十分なサイズだという。室内の照明やカメラの充電などに使うことが多い。
自宅で充電することはなく、そのすべてを走行充電でまかなっている。シガーソケットからの充電だと満充電されないことが多く、昇圧器を間に接続している。
追加アイテムでさらに快適に!
最初はそれほど気にしていなかったが、使ってみたら効果のあったアイテム。上写真の白く丸いのはBLUETOOTHの温度計。湿度計も付いていて、ログが取れるようになっている。外側にもセンサーを取り付けて、内外気温を測れるようにしている。
ガラスのジャグと排水用のステンレスロート。水回りを設置するか悩んだが、車内で食後の歯磨きができるのはありがたいという。
オーナープロフィール
渡辺圭史さん
アウトドアや車関連のフリー編集者。仕事の際は車での移動がほとんど。車中泊をしながら取材先に向かうことが多い。DIYが好きで、休日は車の改造に時間を取られている
出典:カーネルvol.49 2021年春号
写真:中里慎一郎
文:カーネル編集部