車中泊避難の基本を解説するシリーズ企画。事前準備編①では、自家用車で「寝られるか」のチェックポイントを解説。シートアレンジ別の就寝パターンとそのメリット、デメリットなど。

車中泊避難で重要なのは、自家用車で誰が、何人、寝られるか?

車を購入する際に、「何人乗り」という乗車人数は確認するが、「就寝人数」を確認するのは、キャンピングカーくらいだろう。

しかし、避難生活で車中泊を活用するならば、最初に考えるべきは、「このマイカーで家族は何人寝られるか?」という点なのだ。

家族で所有している車の台数と車種を再確認し、一緒に避難生活を送る家族の人数と照らし合わることが、事前準備の大切な第一歩。4人家族だが全員大人で、「ひとりにつき一台」という家庭もあれば、「家族4人で軽自動車一台」ということもある。

そこで重要になってくるのが、所有しているマイカーのシートアレンジとなる。そのシートアレンジで「誰が、何人寝られるか?」ということを把握しておくこと。

実際に車中泊をしてみると気づくことも多い。写真はホンダ・N‐BOXの車内。軽自動車で家族4人は寝られない。2名が限界だろう。

いくら「ひとり一台」所有していても、2シーターのスポーツカーでは、快適な車中泊は厳しい。しかし、ハイエースのようなワンボックスカーであれば、その一台で全員が寝られることもある。ここでのポイントは、「実際に車中泊できるかどうか」の事前シミュレーションだ。

まずは自分の車のシートアレンジを確認し、どのアレンジがもっとも快適に寝られるか? 何人までならストレスなく寝られるか? ということを平時に把握しておくと、緊急時に慌てなくて済む。

万が一被災した際、「お母さんと妹は車中泊で、お父さんとお兄ちゃんは避難所へ」と、暫定的に決めておくだけでも、準備する物がわかり、心構えも大きく違ってくるはずだ。

とはいえ、車内サイズやシートアレンジの確認だけでは、本当に快適に寝られるかどうか人によって異なる。可能であれば、一度様々なシートアレンジを試して寝てみてほしい。きっと自分たちの家族に適したスタイルが、身をもってわかるはずだ。

それぞれのアレンジで寝るときの〇と×は?

車内で寝る方法は大きく3つ。①シートリクライニングのみで寝る、②リクライニングなどでアレンジしたシートを繋げて寝る、③ラゲッジに寝る、の3つ。それぞれのアレンジで就寝するときのいい点、気になる点を紹介しよう。

まずは快眠するための1人分のスペースを把握

人が寝るのに必要なスペースを知っておくと、マイカーの就寝人数を確認するのに役立つ。左の数値は、そのおおよその目安。ただし、小さな子どもと一緒に寝なければいけなかったり、天井が近いと眠れないという人もいるだろう。だから、一度寝てみることをおすすめする。きっといろいろ気づくはず。

①シートリクライニングのみで寝る場合

背もたれを倒すだけのもっともシンプルなアレンジ。セダンタイプに多く、シートの柔らかさを生かして就寝できる。

ただし、背もたれを倒しても水平にならず、座面と背もたれの間に段差もできやすい。その段差をクッションやタオルなどでいかに解消できるか?

また膝を曲げたままだとエコノミークラス症候群になりやすいので、足元に荷物などを置いて、体全体を水平にする工夫が必要だろう。

②シートを繋いで寝る場合

ミニバンタイプに多いシートアレンジ。シートがそのまま寝床になるので、クッション性は高く、体を水平にして寝られる。

ただし、車種によっては作業が複雑で、慣れないと時間がかかることも。さらに意外に隙間や凹凸もあり、よりフラットにするには工夫が必要だろう。

また「座る」のと「寝る」のではスペースは異なる。ミニバンであっても何人が快適に寝られるか試してみてほしい。

③ラゲッジで寝る場合

ワンボックスやステーションワゴンに多いのが、このラゲッジ就寝。床がフラットになることが多いので、マットなどで硬さを解消できれば、かなり寝やすいはず。

注意点はラゲッジの奥行き。大人の男性が横になると、奥行きの長さが足りないこともよくある。首や足を曲げなければいけなかったり、体を斜めにしなければいけなかったり……。やはり一度寝てみることをおすすめしたい。

出典:災害時に役立つ車中泊マニュアル