軽トラキャンピングカーで「四国八十八カ所のお遍路」の巡礼地を車中泊でめぐった旅の記録。四国に点在する八十八カ所の霊場巡拝のほか、道の駅スタンプラリー制覇も目指して挑戦。彼の地を車中泊でめぐろうと思っている人へ、少しでも参考になれば幸いだ。旅人/新井芳夫

第6回 ようこそ土佐へ! 28番札所・大日寺~36番札所・青龍寺

2017年3月20日から5月8日までの50日間、全行程6817㎞。四国八十八カ所お遍路ひとり車中泊旅! 連載6回目。今回の旅も阿波から土佐へ。ついに高知県に入ったが、山に囲まれた土地ということもあり、山間部をひたすら走るという苦行(?)が待っていた!?

20日目はお腹いっぱい胸いっぱい……の峠の山道

高知に入ってから3日続きで雨空の移動。今日はお遍路参拝を中止して、道の駅のスタンプラリーを行うことにしました。

まずは高知自動車道の南国ICの入り口に位置する、道の駅南国風ふ良ら里りに立ち寄りました。高知市内から山道に入る国道32号沿いに位置する南国風良里は、駐車場が傾斜地でクルマが止めづらいです(のちにいい場所を裏に発見)。

今日は土曜日なので朝から家族連れで賑わっており、施設の下見をしながら道の駅のスタンプを押し、散策。

このあと道の駅大杉へ向かうのですが、やはり山間部にあるので今日も山道走行です(ヤレヤレ)。道の駅大杉はローカル色豊かな小さな施設で、個人商店のような佇まいです。お店の人もすてきな笑顔でとても温かい対応をしてくれて好印象でした。

長い山道を走ってきたのでコーヒーを飲みたいと尋ねたところ、近くのコーヒー店「大田口カフェ」を紹介してくれました。

そこは夫婦ふたりで切り盛りしており、コーヒーの香りが漂う店内は、時間が止まっていたかのような雰囲気の空間でした。

奥さんに「八畝(ヨウネ)の棚田という所がきれいですよ」と教えてもらいましたが、雨のためこの日は見ることができず残念。

さて、次は国道439号で道の駅土佐さめうらへ。18㎞、30分ほどの道のりです。さめうらは、毎年夏場の渇水期にニュースとなる、四国の水がめ・早明浦ダムのある町です。道の駅では、土佐赤牛の牛肉うどん、れいほく牛丼など、おいしい昼食メニューがそろっています。

国道の番号を足した数字が由来の道の駅

次はムササビの里へ向かいます。道中の439号は、山間部ながら左右に開けた緩やかな道で、大変走りやすかったです。

ちなみに、なぜムササビかというと、今回通った439号に194号が交わる交差点にあるため、439+1941=633で「633美の里(ムササビの里)」というのが名前の由来です。

施設内には、野菜の販売コーナーと喫茶コーナーがあり、試食したらどれもおいしかったため、お菓子を少し購入。週末ということもあって、この道の駅も大変賑わっていました。

道の駅633美の里から10分ほど進むと、吾北ムササビ温泉があり、この日はこちらの温泉に入ってから、目的地へ向かいます。同温泉は鉄分を含むナトリウム塩化物泉で、1時間ほど入浴。おかげさまで一日の疲れが取れました。

その後、道の駅土佐和紙工芸村へ。到着は18時を過ぎていましたが、訪れた時期は18時でもまだ明るい時間帯。夏至の6月までは毎日、日の入りが遅くなっていくので、クルマ旅では時間が有効に使えて助かります。

道の駅土佐和紙工芸村(高知⑩) 仮眠環境〇
土佐伝統の和紙の紙すき体験が出来るほか、周辺観光の拠点として利用できる宿泊棟も備えた道の駅。薬湯風呂もある。写真/As6022014

道の駅の施設内を下見して、夕食の準備に入ります。途中の道の駅で買った食材と野菜サラダ、お湯を沸かしてインスタント味噌汁。そして、おでんにビールで乾杯です。

<20日目のお遍路データ>
走行距離 110km(累計2903km)  
札所めぐり 0打(累計27打)  
道の駅スタンプ 5駅(累計93駅)
道の駅スタンプラリーのルート
美良布発→高知⑥(道の駅南国風良里)→高知①(道の駅大杉)→高知⑪(道の駅土佐さめうら)→高知⑱(道の駅633美の里)→高知⑩(道の駅土佐和紙工芸村)
※文中の丸囲みの数字はスタンプラリーの番号です

地方の繁華街を見て残念に思う21日目

35番札所 清滝寺。

3日ぶりに天気が回復し、陽射しがまぶしい朝を迎えました。この日は高知市内の散策とお寺まわりを再開。まずは35番札所の清瀧寺へ参拝に向かいます。

昨夜の道の駅に近いお寺ですが、じつはクルマお遍路では最大の難所。狭い道の急坂が続き、対向車が来ると擦れ違うのにギリギリというスリル満点の道が続きます。

そんな道を通って到着した清滝寺は厄除け祈願の名刹。本堂前には、台座を含めた高さが15mという厄除け薬師如来立像が迎えてくれます。台座の中で88段の「戒壇巡り」ができる厄除け寺として有名です。

28番札所 大日寺。

26番札所 国分寺。

この日に訪れたふたつ目のお寺は、28番札所の大日寺です。同寺は、明治時代の神仏分離令により廃寺になりました。しかし、大日堂と改称した本堂に本尊を安置していたことで、その後、明治17年に再興された歴史あるお寺です。

30番札所 善楽寺。

そして、30番札所の善楽寺は女性住職のいるお寺。2016年7月から高知県初の女性住職として活躍中です。

ここでは、お遍路旅をイメージした金剛杖と笠を組み合わせたストラップが、お参り後のお土産としてロングセラーの人気だそうです。地元の障害者施設で作られているお土産とのことで、誕生から10年以上を経たいまでも、時おり品切れになってしまうほどの人気の逸品とのこと。

善楽寺の本堂近くには不動明王も鎮座。訪れた時は絶対にストラップを買うべしと、ご託宣があるとかないとか(?)

この日は、善楽寺の参拝が終わったところで12時を経過。昼食を取るため、高知市内のイオンに立ち寄り、昼食と食料の買い出しをしました。

その後、高知駅付近を散策して高知城見学へ。日曜日だったため、高知城見学に訪れるクルマと、家族連れの買い物客で道路は大渋滞! そのため、高知城見学は中止し、高知駅前の路面電車をパチリとカメラにおさめました。

善楽寺の大人気ストラップ!

善楽寺近くの障害者施設で一つひとつ手作りで作っているストラップ。草鞋と金剛杖、それに遍路笠がセットになったタイプは600円。金剛杖と遍路笠のセットは500円となる。

南国風良里では裏手にいい空間を発見

地方の駅前にある繫華街を訪れて、いつも思うことがあります。昔からの街並みをもっと大切にして、地方都市の特色を出すことで、旅人は印象に残る思い出を作ることができるのに……と。

そんな思いを抱きながら、はりまや橋を通って31番札所の竹林寺へ向かいました。

31番札所 竹林寺。

竹林寺は、高知五台山公園の近くにあり、高知市内と浦戸湾を一望できる抜群のロケーションのお寺です。学問のお寺として、土佐文化の中心になっています。

また同寺には、竹筒をイメージした容器に入った、羊羹が売られているのもおもしろいところ。お遍路さんが、歩きながら食べたい分だけ筒から押し出し、食べられるようになっています。

この日は、御朱印をもらうと17時近くになってしまうので、参拝はここまでとし、昨日訪れた道の駅南国風良里に向かいます。途中で、立ち寄り湯のながおか温泉へ。少し混雑していましたが、夕日に映える高知市内を望みながら、一日の疲れをとる至福の時間を味わいました。

南国風良里の駐車場が傾斜地だったのを覚えていたため、クルマを止める位置を考えながら、同施設へリターン。到着してみると、なんと施設の裏側に広い駐車場がある! さらに、満開の桜が風で舞い散る最高のロケーションに、思わず「ラッキー!」と声を出すほどでした。

道の駅風良里(高知⑥) 仮眠環境〇
きれいに清掃がされていて気持ちよく利用できる。手洗い施設には花も飾られていて、24時間明かりが灯り、夜の利用も安全。写真/オナガドリ

<21日目のお遍路データ>
走行距離 114km(累計3017km) 
札所めぐり 5打(累計32打)  
道の駅スタンプ 0駅(累計93駅)
札所めぐりのルート
土佐和紙工芸村発→1 35番札所清瀧寺→2  28 番札所大日寺→3 29 番札所国分寺→4  30 番札所善楽寺→5 31番札所竹林寺→ 6  高知⑥(道の駅風良里)
※文中の丸囲みの数字はスタンプラリーの番号です

22日目はあの横綱も名前を頂戴した由緒ある札所へ

32番札所 禅師峰寺。

昨日打ち終えた竹林寺から、8kmの距離にある32番札所の禅師峰寺。峰山の山頂にある山寺で、ご本尊の十一面観音菩薩は船ふな魂だま観音と慕われています。海上交通の安全を祈願して建てられたといわれています。

天気がよければ、眼下に浦ノ内湾を望む絶景が境内から眺められるところですが、この日も雨で残念。春先の晴れが3日と続かない天候のなかを、次の札所へ。途中高知の名刹、桂浜海岸の龍馬の像を見にいきました。

40年前に親友と走った、四国一周のクルマ旅以来の桂浜海岸でした。その時の愛車は、石原裕次郎主演の『栄光への500km』で有名なサファリラリー仕様の日産/ブルーバード510。

浦ノ内湾を渡り観光道路から左折して、桂浜海岸へおりてみるも、雨の海岸は観光客もまばらで、寂しいかぎりでした。

33番札所 雪蹊寺。

この日の札所巡礼寺4打ちは、距離が約10kmずつしか離れてないので、楽に移動できます。ふたつ目の33番札所・雪蹊寺には、鎌倉時代に活躍した仏師・運慶の作と伝えられている本尊の薬師如来像があります。

さらに脇侍の日光菩薩、月光菩薩も運慶の作と伝えられており、息子の湛慶作の毘沙門天像、吉祥天女像などと一緒に霊宝殿に保管されています。そのため、「鎌倉仏像の宝庫」ともいわれています。また、四国には真言宗のお寺が多いなかで、同寺は珍しい禅宗のお寺のひとつです。

弘法大師のゆかりの色濃い札所に感動

34番札所 種間寺。高知に入ると弘法大師の縁が印象深く残る札所に多く出合える。種間寺は安全祈願のお寺でもあり、柄杓を使って安産祈願を行ない、無事出産が適うと柄杓を奉納する習わしがある。

次の34番札所の種間寺は、弘法大師が薬師如来を本尊として開基。当時、唐の国から持ち帰った五穀(米、麦、栗、キビ、豆)の種を境内に蒔いたことから、種間寺という名になったとのこと。

35番札所 清瀧寺。

35番、36番の札所は、漢字が似ていて読みまちがいやすいかもしれません。35番札所は清瀧寺(きよたきじ)、36番札所は青龍寺(しょうりゅうじ)です。

36番札所 青龍寺。

その名前の由来は、弘法大師が真言密教の奥義を授かった、唐の修行の地である長安の「青龍寺」から。修行させてもらった恩に報いるため、日本にも青龍寺を建立したいと考えた大師は、仏具である独鈷(どっこ)を日本の方向に投げ帰国。

すると、この地の老松に独鈷が刺さっており、弘仁6年、不動明王の石像を安置して開基したといわれています。

山門をくぐると、170段の石段が出現。石段を登りきると、本堂の前には波切不動明王の石像が睨みをきかせています。境内には本堂、大師堂、薬師堂が一直線に並んでおり、この配置は唐の青龍寺と同じとのこと。

また、大相撲の元横綱「朝青龍」が、高校生の時にモンゴルから相撲留学していたのが、青龍寺近くの「明徳義塾高校」。青龍寺の石段で体を鍛えていたことから、四股名の「朝青龍明徳」は、青龍寺と明徳義塾から取った四股名ともいわれています。

この日のお遍路はここで終えて、道の駅をふたつ巡り、目的地である道の駅ゆすはらを目指しました。途中、津野町の山田温泉に立ち寄り。温泉ガイドの無料入浴券を利用させてもらいました。

道の駅ゆすはらには隣接した温泉施設がある

山田温泉で元気が出たところで、道の駅布施ケ坂と道の駅ゆすはらを目指しました。坂道の続く国道197号をしばらく走り、18時過ぎにようやくゆすはらに到着。

残念ながら、途中の道の駅施ケ坂でスタンプを押すことはできず、雨も降り出す始末。夕闇が迫っていたので、急いで道の駅の施設の下見をしました。

ここは温泉施設の「雲の上の温泉」が隣接しているのもポイント。朝から降る雨のなか、お遍路参拝と道の駅スタンプラリー遂行した一日。明日からの体力保持と体のメンテナンスする意味で、この日二度目の温泉に入りました。

道の駅ゆすはら(高知⑤) 仮眠環境△
タイル張りの広いトイレだが便器が汚れていた。また一部タイルが割れているところがあり少し残念。観光客の多い施設なので、トイレの美観を望みたい。写真/アラツク

<22日目のお遍路データ>
走行距離 124km(累計3141km)  
札所めぐり 4打(累計36打)
道の駅スタンプ 3駅(累計96駅)
札所めぐりのルート
風良里発→1 32番札所禅師峰寺→2 33番札所 雪蹊寺→3 34番札所種間寺→4 36番札所青龍 寺→5 高知⑬(道の駅かわうその里すさき)→6 高 知⑧(道の駅布施ヶ坂)→7 高知⑤(道の駅ゆすはら
※文中の丸囲みの数字はスタンプラリーの番号です

 

旅人プロフィール 新井芳夫

●埼玉県在住
●車中泊歴40年以上
●主な車中泊スポット:全国各地(道の駅が中心)

愛車のスバル・サンバート ラックで四国お遍路旅を楽しむ旅人。実は40年以上も前から国産ワンボックスカーにDIYを施して楽しんできた、車中泊のベテランでもある。

写真・文/新井芳夫
構成/野里卓也
出典/カーネルvol.44冬号

 

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