軽トラキャンピングカーで「四国八十八カ所のお遍路」の巡礼地を車中泊でめぐった旅の記録。四国に点在する八十八カ所の霊場巡拝のほか、道の駅スタンプラリー制覇も目指して挑戦。彼の地を車中泊でめぐろうと思っている人へ、少しでも参考になれば幸いだ。旅人/新井芳夫

第5回 阿波から土佐へまいるぜよ!? 20番札所・鶴林寺~27番札所・神峰寺

2017年3月20日から5月8日までの50日間、全行程6817㎞。四国八十八カ所お遍路ひとり車中泊旅! 連載5回目。ようやく四国入りしたとはいえ、旅はまだまだ前半。阿波の国・徳島県から土佐・高知県へ入ったのだが、そこは旅人を寄せ付けない過酷な道のりが待っていたのであった……!

17日目もまだまだ続くよ、阿波お遍路三大難所

前回、「阿波お遍路三大難所」のうちのひとつ、焼山を紹介しましたが、今回訪れた20番札所もその難所のひとつ。

三大難所は「一に焼山、二にお鶴、三に太龍」といわれていますが、その「二にお鶴」の鶴林寺が今回の最初。山門の中に鶴の彫り物が2羽あり、地元の人たちには「お鶴さん」と呼ばれ、親しまれています。

20番札所 鶴林寺/鶴林寺への道中はつづら折りの山道! 注意!

鶴林寺(かくりんじ)は高野山真言宗の寺院で、798年に弘法大師が開いたお寺と伝えられています。数多くの四国霊場を焼失させた「天正の兵火」の難を免れた数少ない寺院でもあり、建立当時の面影を今に伝える寺院のひとつ。

標高550mの鷲ケ尾山頂に築かれており、道中は急斜面で狭い道が続きます。キャブコンサイズのキャンピングカーだと、対向車とのすれ違いに注意が必要。私は朝早い時間の移動だったため、大型バスとのすれ違いもなく、鶴林寺へ到着できて幸いでした。

30分ほどで20番札所となる、この日の1寺目の参拝が終了。次の立ち寄り地である道の駅鷲の里へ向かいます。

道の駅鷲の里には、21番札所の太龍寺へと向かうロープウェイの駅が併設されており、道の駅のスタンプラリーと札所参拝が同時に可能。ロープウェイは20分間隔で運行されていて、札所めぐりには大変助かります。

21番札所 太龍寺/西日本最長の全長2775mのロープウェイでらくらく。

この太龍寺も、遍路ころがしの三難所のひとつに数えられる寺ですが、1992年からは太龍寺ロープウェイの運行により、楽に参拝できるようになったようです。

1時間ほどで参拝とスタンプを押すことができ、次の立ち寄り地、道の駅わじきへ向かいます。そこで少し小休止。昼食&コーヒータイムです。

道の駅わじきは国道195号沿いにあり、22番札所・平等寺へ向かう途中にある小さな施設。道の駅の看板を見落とすと通過してしまいそう。施設内のトイレは美しく掃除されていて、気持ちよく使わせてもらいました。

道の駅内にあるお店の人からも「お遍路さんですか?」と気軽に声をかけていただき、お茶のご接待をいただきました。「立ち寄るお客様は、平等寺へ向かうお遍路さんが多いですね」とのことでした。

道の駅もみじ川温泉で腰痛のメンテナンスをする

22番札所 平等寺/弘法大師が掘ったとされる井戸が残る。

22番札所の平等寺へは、道の駅わじきから15分ほどで到着。境内の桜は満開! 春の息吹も感じられ、昼下がりのまったりとした時間が、お遍路旅のすばらしさを感じさせてくれる景観でした。

札所参拝が終わると、地元の人たちによる甘酒のご接待。地元の人たちの優しさを実感しながら、平等寺を後にしました。

道の駅もみじ川温泉(徳島⑧)。 仮眠環境 〇。トイレがきれいに掃除されており、夜は交通量も少なくなり、静かに仮眠できてよかったです。上水の補充が少し難ありでしたが、施設の反対側にあるお店のご主人に水をもらうことができて助かりました。写真/Sunport1216 ※ 道の駅の丸囲みの数字はスタンプラリーの番号です
 

その後16時過ぎに今日の目的地、道の駅もみじ川温泉に到着。もみじ川温泉は川口ダム湖畔にあるアルカリ性硫黄泉の温泉施設で、神経痛、リウマチ、腰痛に効く温泉です。長いクルマ旅の毎日が続く私には、大変助かる温泉でした。

この日で旅も17日目、2500km走破となり、ギックリ腰の持病をもつ私には、腰痛のメンテナンスをするのに絶好の温泉です。フロントで道の駅もみじ川温泉のスタンプを押してもらい、入浴料500円を支払い、さっそく温泉につかります。

お店のご主人に伺うと、週末などには、温泉を利用しつつ、車中泊をする人で混雑すると話していました。

<17日目のお遍路データ>
走行距離 61km(累計2596km)
札所めぐり 3打(累計22打)
道の駅スタンプ 3駅(累計81駅)
札所めぐりのルート
道の駅ひなの里かつうら→20番札所鶴林寺→徳島 ②(道の駅鷲の里)ロープウェイ→21番札所太龍 寺→徳島⑥(道の駅わじき)→22番札所平等寺 →徳島⑧(道の駅もみじ川温泉)  
道の駅ひなの里かつうら→20番札所鶴林寺→徳島 ②(道の駅鷲の里)ロープウェイ→21番札所太龍 寺→徳島⑥(道の駅わじき)→22番札所平等寺 →徳島⑧(道の駅もみじ川温泉)
※道の駅の丸囲みの数字はスタンプラリーの番号です

歩きお遍路には苦行が待ち受ける18日目の高知県

23番札所 薬王寺/写真右奥の最深部に「ゆぎ塔」があるが、そこへ至るまで136段の石段を登らなければならない。

8日目は、国道55号沿いの薬王寺と道の駅日和佐を目指します。ふたつの場所は300mくらいしか離れておらず、道の駅から歩いていける近さです。

23番目となる薬王寺は、徳島での最後の札所となるお寺で、厄除けとしても有名です。JR四国の日和佐駅にも近く、お遍路さん以外の観光客も多いようです。山の中腹に大きな赤い丸い塔(ゆぎとう)が建ち、塔の2階からは美しい四国路の街並みと海辺の絶景を望むことができます。

道の駅日和佐には足湯温泉があり、歩きお遍路旅の人たちには、絶大な人気を誇る道の駅です。さらに、薬王寺の麓には、ナトリウム塩化物冷鉱泉の薬王寺温泉があり、13~21時まで入浴することができます。

次の24番札所・最御崎寺は薬王寺から約90kmの距離にあります。歩きお遍路さんの場合だと、1日20km×4日ほどの日数がかかるほど。

阿波(徳島)の国は、札所がまとまっていましたが、土佐の国(高知)は札所間の距離が長く、歩きお遍路さんたちにとっては大変な移動です。

そんな歩きお遍路さんたちが長距離移動の前にゆったりできる……。薬王寺温泉が高い人気を得ているのもうなずけます。

とにかく札所間の距離が長い高知県。上写真は室戸スカイライン。薬王寺から最御崎寺まで、とにかく距離がある。でも、ここまで来ると急に南国の雰囲気に! 写真/Reggaeman

また、24番札所・最御崎寺(ほつみさきじ)から室戸岬への移動は、海沿いに出て、国道55号をひたすら歩くことになります。

クルマと同じ道を歩くのは、相当な根性と健康的な肉体が必須。途中にある道の駅日和佐から穴喰温泉までは、クルマだと34㎞で約40分。薬王寺から最御崎寺まではクルマで2時間ほど。なので、道中の道の駅宍喰温泉で昼食です。

歩きお遍路さんのひとりに話しかけてみると、大阪から来られた「区切り打ち」の方で、今回は室戸岬をまわるとのことでした。10㎏くらいの荷物を背負って1日25㎞ほど歩くとのこと。大変な苦行です。お互いに、旅の安全を祈って別れました。食事後、道の駅スタンプを押して先を急ぎます。

弘法大師が「空海」を名乗った地

24番札所 最御崎寺/弘法大師が悟りを開いたとされる室戸岬からも近い。

最御崎寺は、室戸岬を左まわりでまわってから、室戸スカイラインを登った先にあります。半島の先端近くの山にある、室戸岬灯台の手前に位置するお寺です。天気がよければ絶景の観光スポット! 1200年前は、ここからそんな景色が見えたのだろう!? と思いがめぐります。

土佐の国で初めての札所となる24番・最御崎寺は、延暦11年(792年)、弘法大師が19歳の時に荒行により悟りを開き、「空海」と名乗るようになった地といわれています。

当時、「空海」が悟りを開いたと伝えられている「御みろくど厨人窟」は、最御崎寺に向かう国道55号沿いの右側。洞窟の祠が祀られています。

本堂、大師堂に参拝を済ませ御朱印をいただき、土佐の国ひとつ目の参拝も無事終了。次の札所である津照寺(しんしょうじ)へ向かいます。途中、雨に打たれながら黙々と歩くお遍路さんを見かけましたが、無事を願うばかりです

歩きお遍路や自転車でのお遍路さんの過酷さに絶句……

25番札所 津照寺/弘法大師が悟りを開いたとされる室戸岬からも近い。津照寺は津寺ともいわれ地元から親しまれている。

25番目となる津照寺も無事参拝を終え、次は26番目となる金剛頂寺です。この金剛頂寺も、最御崎寺などと同様に、これまた山の上にあるお寺です。

そこで、雨具を着て自転車を押しながら金剛頂寺を目指す参拝者を見かけました。私も持参の雨具に着替え、降りしきる雨の中、クルマから降りて参拝へ。

静まり返った雨の中で、本堂、大師堂と読経は終了。参拝を終えて山道を下りている途中、人影がないのに、自転車と荷物が投げ出された状態で放置されているのを発見。

どうやら、あまりのつらさに荷物を投げ出して、体ひとつでお寺を目指しているようで、その様子にビックリ。歩きお遍路さんや自転車お遍路さんの厳しさを感じたひとコマでした……。

26番札所 金剛頂寺/長く続く階段。

それから今日の目的地、道の駅キラメッセ室戸に無事到着。今日は雨が降ったりやんだりの一日でした。晴れていれば、太平洋に沈む夕陽の絶景を望むことができたのですが、この日は天気が悪くて残念な一日でした。

少し早く道の駅に着いたので施設内を散策し、食事処で名物の鰹たたき定食をいただきながらビールで乾杯! 土佐の初日を迎えました。

道の駅キラメッセ室戸(高知⑨)。仮眠環境 〇。 トイレがきれいで清潔。夜間のトイ レの照明もつき安全。国道沿いだが、夜の交通量は少なく静かでした。写真/Totti

<18日目のお遍路データ>
走行距離 114km(累計2710km)
札所めぐり 4打(累計26打)
道の駅スタンプ 3駅(累計84駅)
札所めぐりのルート
もみじ川温泉発→23番札所薬王寺→徳島⑫(道 の駅日和佐)→徳島③(道の駅宍喰温泉)→24 番札所最御崎寺→25番札所津照寺→26番札 所金剛頂寺→道の駅キラメッセ室戸(高知⑨)
※文中の丸囲みの数字はスタンプラリーの番号です

歩きお遍路さんを接待した19日目

19日目、この日は高知市内を目指しました。キラメッセ室戸から次の道の駅田野駅屋までは、20㎞・30分ほどの距離。

到着後、30分ほどコーヒータイムをとっていたときのこと。菅笠に雨具を着て、ずぶ濡れの状態で道の駅にたどり着いた、歩きお遍路さんを見かけました。疲れているようで、雨具を脱ぎ、濡れた靴を脱いで逆さにすると、ザーと雨水が落ちるほど濡れており、しばらく放心状態で休んでいました。

様子を見ていた私は、近寄ってコーヒーを差し出しながら話しかけると、千葉県から歩きお遍路に来ているとのこと。天気が悪いので、ここの道の駅に泊まるか、しばらく様子見の状態だといっていました。

せっかくなので話を聞くと、お遍路を始める前年に定年退職し、自由な時間を手に入れたので、長年憧れていた歩きお遍路旅に挑戦。この日は12日目とのこと。

「私には十分な時間があるので、今日はゆっくり休みます。先は急ぎません」と笑顔で話されていたので、少し安心。

私もこの日は天気が悪いので、道の駅のスタンプラリーをメインに移動。ただし27番札所神峯寺(こうのみねじ)だけは、高知市街地に入る手前の札所なので参拝しました。

27番札所 神峰寺。写真/Reggaeman

前日に続き小雨まじりのなか、細い山道の登りの連続。特に、最後の急坂の連続はクルマでも大変でした。登りきった駐車場から、さらに急な石段を手すりにつかまりながら歩いて登り、やっと本堂にたどり着きました。

神峰寺は、標高630mの神峰山の山頂にある山寺で、その遍路道は「真まっつ縦たて」といわれるほどの難所です。その険しさから「土佐の関所寺」と昔からいわれているほど。

今回は、安全を考えて完全防備の雨具を着ての参拝になりました。雨の中の参拝は本当に大変です……。この日のひとつ目の参拝も無事に終り、神峯寺を後にしました。

国道195号沿いの温泉は穴場的な施設

国道55号を移動し、道の駅のスタンプラリーを続けながら、国道195号沿いにある「夢の温泉」に立ち寄り。道路沿いに立つ看板を頼りに、細い道をゆっくり走ります。

普通の民家が温泉になっており、施設の人に地元の様子を聞きながら受け付けを済ませて温泉に入りました。15時過ぎのため入浴客はひとりもおらず、ゆっくりと雨で濡れた体を温泉で休めることができました。温泉からあがるころには、雲の切れ間から陽も射してきて、翌日への活力が湧き出してきました。

道の駅美良布(高知⑦)。仮眠環境 ×。トイレが汚れていて、印象はかなり悪い。さらに、施設のメンテナンスが行き届いていない感じもしました。昨今は外国からの旅行客も多いので、トイレだけでも急ぎ修繕してほしいです。写真/京浜にけ

そんな温泉からしばらく山道を移動し、道の駅美良布に着くころには天候も一時回復。道の駅美良布は、地元の農産物直売所でにぎわっており、道の駅とは思えない雰囲気の施設でした。奥にはアンパンマンミュージアムがあり、週末には小さなお子さん連れの家族に人気のアトラクション施設も。四国のなかでも、古い施設の道の駅だそうです。

<19日目のお遍路データ>
走行距離 83km(累計2793km)  
札所めぐり 1打(累計27打)  
道の駅スタンプ 4駅(累計88駅)
札所めぐりのルート
キラメッセ室戸発→高知⑲(道の駅田野駅屋) →27番札所神峯寺→高知⑫(道の駅大山)→ 高知⑰(道の駅やす)→道の駅美良布(高知⑦)
※文中の丸囲みの数字はスタンプラリーの番号です

旅人プロフィール 新井芳夫

●埼玉県在住
●車中泊歴40年以上
●主な車中泊スポット:全国各地(道の駅が中心)

愛車のスバル・サンバート ラックで四国お遍路旅を楽しむ旅人。実は40年以上も前から国産ワンボックスカーにDIYを施して楽しんできた、車中泊のベテランでもある。

写真・文/新井芳夫
構成/野里卓也
出典/カーネルvol.43秋号

 

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