近年、人気沸騰中の山行スタイルがテント泊。しっかり歩いて、ゆっくり休んで、一日中、山を楽しめるのがテント泊の喜びであり、醍醐味である。そんなテント泊をもっと楽しみたい方々におすすめなのが、峰々をつないで歩く縦走コース。いくつものピークを越えて、じっくりテント泊を楽しむことができる。

『TRAMPIN’ vol.32 本当に気持ちがいい 山のテント泊ガイド』では、山岳写真家の西田省三さんおすすめのテント泊縦走コースを8つ紹介。全国各地を飛び回り、美しい景色を知っている西田さんが厳選したコースは「今年こそ、あの場所で!」と思わせる珠玉のコースばかりだ。一度は歩いてみたい鉄板コースから、静かな山を楽しめる穴場コースまで。今回はそのなかから厳選した4コースを紹介。どのコースも最高の景色があなたを待っているはず!

1.常念山脈
人気上昇中の北アルプス初級縦走コース


常念山脈の稜線からの眺め。常に穂高・槍を眺める展望台となっていて贅沢な縦走路だ

北アルプスの中では比較的歩きやすく、テント泊を始めたばかりの人にもおすすめの定番縦走コース。
中房温泉から歩き始めて、花崗岩の山容が特徴的な燕岳から、コース最高峰の大天井岳、ピラミダルな姿が美しい常念岳、のどかな山歩きを味わえる蝶ケ岳と、個性的な山々をつないでいく楽しみがあるコースだ。
中房温泉から燕岳までの稜線は、北アルプス三大急登の合戦尾根。標高差はそれなりにあるが、しっかり整備されているので初心者でも歩きやすいのがうれしい。


常念小屋のテント場。北アルプスの峰々の奥には穂高・槍がそびえる

縦走路上のテント場はどこも展望がよく、北アルプスの山並みや朝夕の絶景が味わえるのもポイント。特に常念小屋のテント場は、槍穂高の稜線が目の前に広がる大パノラマを楽しめるので、人気が高い。

2.八ケ岳・赤岳〜権現岳
静かな八ケ岳を楽しめる穴場縦走コース


赤岳から望む権現岳への縦走路。奥に見えるのは南アルプス

コンパクトにまとまった縦走コースを楽しめる八ケ岳。都心からのアクセスがよく、一年を通じて登山者が多いエリアだ。人の多い八ケ岳にあって、静かな山旅が楽しめるのが赤岳から権現岳を歩く縦走コース。赤岳周辺や旭岳、権現岳には岩場が多く、やや上級者向けのコースで歩きごたえは◎。


行者小屋のテント場から赤岳を見上げる。土日は混雑する人気のテント場

コースプランとしては、初日に行者小屋のテント場に泊まり、翌日は赤岳と権現岳を越えて、青年小屋のテント場に泊まる1泊2日の行程がおすすめ。赤岳の眺めのよい行者小屋と、樹林に囲まれた青年小屋と、雰囲気の異なったテント泊が楽しめる。

3.白馬三山
北アルプスを代表する花と展望の縦走コース


白馬岳直下から杓子岳、白馬鑓ケ岳を望む。展望が自慢の縦走コースだ

白馬岳は後立山連峰の最高峰。稜線は高山植物が咲き乱れ、北アルプス屈指の花の山として有名だ。コースを通じて展望は抜群。岳天空のお花畑を楽しみながら、雄大な北アルプスの峰々を眺められる贅沢なコースである。


白馬大池のテント場はほぼ真っ平らに整地されていて、テントを張りやすい

コース上のテント場は3カ所。白馬大池テント場は、青色に輝く白馬大池の湖畔にあり、周辺はハクサンコザクラやチングルマのお花畑。広く平らなテント場で、お盆や連休で混雑する時期でも安心だ。2つ目は白馬岳頂上宿舎のテント場。この周辺もお花畑が広がっていて、早めについて散策するのがおすすめ。3つ目は白馬鑓温泉のテント場。山上の露天風呂が楽しめる小屋で、山旅の最後を締めくくるのにぴったり。

4.金峰山〜甲武信ケ岳
稜線漫歩と奥秩父山地の原生林を楽しむ縦走コース


木漏れ日が心地よい縦走路の樹林。苔むした深い森がこの山域の魅力

金峰山や甲武信ケ岳、瑞牆山など、多くの名山をもつ奥秩父山塊。比較的手軽に、静かな樹林歩きと展望のよい稜線が楽しめる場所だ。
ここで紹介する金峰山から甲武信ケ岳は、そのなかでも一推しの縦走路。金峰山から大弛峠までは展望を楽しみ、大弛峠から甲武信ケ岳は奥秩父らしい苔むした原生林の道を行く。なかなかのロングコースなので、歩き甲斐もあって充実度は◎。


富士見平のテント場は瑞牆山と金峰山のベースキャンプ地にもなっているので、土日は混雑注意

富士見平や大弛峠、甲武信小屋のいずれも、テント場は静かな樹林の中。稜線のテント場と違って、風の心配がなく、安心して過ごせるのがうれしい。初夏や晩夏など、暑さがやわらいだ季節にさわやかな森を楽しむのにおすすめだ。

※こちらの記事は『TRAMPIN’ vol.32 本当に気持ちがいい 山のテント泊ガイド』の一部を再編集したものです。